こんにちは!Hatch Dental Clinic 平沼です!
今日、僕の師匠(と勝手に言っていますが)の綿引淳一先生から書籍の贈り物が届きましたので、ご紹介いたします。
綿引先生執筆の『包括的矯正歯科治療 - 審美と機能を両立するためのフィロソフィー』
しかもサイン入り
まだ全ては読んでいないのですが、内容も分かりやすく、かつ充実しており、めちゃくちゃ勉強になります。
綿引先生ありがとうございます!勉強させていただきます!
皆さんは、子どもの頃から当たり前だと思っていた事が覆されたという経験はありますか?
先日『星の子』という映画を観まして、少し思うところがありましたので取り挙げさせていただきます。
ある新興宗教を盲信する両親の下で育った中学生の女の子が、社会と家庭環境の間にある隔たりを認識していく、というざっくりですがそんな内容です。
公開時からずっと観たいと思っていたのですが、すっかり忘れていて、気付いたらNetflixやAmazonプライムで観られるようになっていました。
子どもの頃って、自分が置かれている環境を一切疑う事なく受け入れていますよね。
もちろん僕も子どもの頃は、それが当たり前のことであるかのように、ピアノ教室や書道教室、スイミングスクールなどに通っていました。
それが宗教の集会だったとしても、なんら不審には感じなかったはずです。
実際、その時住んでいたマンションや習い事などの集会に参加する事が度々ありましたが、作中に出てくる宗教の研修会で、同年代の子ども同士が集まっているシーンを見て、少し既視感を覚えました。
当時は、友達と集まって遊べることの喜び以外には何も考えていなかったと思います。
子どもの目には、どちらも同じことのように映るのかもしれません。
作中、宗教幹部の女性の台詞に
「あなたが今ここにいるのは、あなたの意思じゃないのよ」
という台詞がありました。一見するとスピリチュアルな台詞にも思えます。
しかし、自分の意思で判断のできない子どもが、親の意思で連れてこられている、という意味合いにも受け取れます。
僕は、観ている人がどちらとも受け取れるように置いた台詞のような気がします。
最終的に女の子は、両親が世間(入信者以外の社会)から疎まれる新興宗教に盲信している事を理解した上で、家族と共に生きていくことを選択します。
この、家出したお姉さんとは別の選択をする、という対比も、自らが判断して選択することが大切であるという事を示唆しています。
これからは親の意思ではなく自分の意思で、信者として集会などに参加するようになるのだと思います。
治療でもそうですが、自分が理解した上で選択する事が大切です。
統一教会も一時期メディアで大変話題になりましたが、権威性を付けるために総理大臣など政治家からのメッセージ動画やスピーチを行っていたそうですね。
もし、何かしらのきっかけでそういった宗教などに興味を持って、芸能人や政治家など著名人が参加していたら、信じてしまいませんか?
何が正しくて何を信じればいいのか、本当に理解して判断することは困難です。
これが歯科の業界だとして、新しい学会・スタディグループが立ち上がって、著名な先生方がサポートしていたら、我々も危ういです。
事実、噛み合わせなどの不確かな分野に於いては、周りから『宗教じみている』という陰口を叩かれているグループが多くあります。
僕には、そういったグループの理論が正しいかどうかの判断はできません。
『偉い先生がそう言った』から信じてしまう、というのは人間であればある程度は仕方のない事です。
だからこそ、我々専門家が最も信ずるべきなのは学術論文(エビデンス)です。
論文にもさまざまなランクがあり、掲載されている雑誌の質(インパクトファクター)もそうですし、症例報告からシステマティックレビュー・メタアナリシスなど、『エビデンスレベル』という信ずるに値するか?のランク付けがあります。
僕も論文を書いた事がありますし、分からない事はなるべく論文を読むようにしているので分かるのですが、論文に書かれていれば正しいか?というと、そうとも言い切れません。
方法や統計方法によってばらつきが出たり、バイアスがかかっていたりします。
論文は疑問をもって読み始めるべきだと思います。
そしてなるべくなら、システマティックレビューやメタアナリシスから読むことが望ましいと思います。
その読み解く力さえ身に付けることが出来れば、専門知識に関しては、正しく理解し、判断する手助けとなってくれるはずです。
しかしながら、そういったエビデンスがあるにも関わらず、根拠なしに怪しげな方法で治療を行っている歯科医師が多いのも事実です。
特に、研究が難しい噛み合わせなどではより顕著です。
正しい知識を身に付けて患者さんに分かりやすく説明することが、我々の役割でもあるはずです。
だから歯科医師は、もっと勤勉であるべきです。
たとえ大人であったとしても、全てを自らの意思で行動している人はいないはずです。
何かしらの情報に左右されています。
特に、その権威であったり、勧められた人への信頼であったり、思い入れが強ければ強いほど、信じてしまいがちになります。
何が正しいのか?
何を信じればいいのか?
『星の子』は人間社会の危うさを再認識させられるような、とても面白い内容の映画でした。
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