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Hatch Dental Clinic

素敵な贈り物が届きました。(後半)露出した象牙質への処理〜今までの定説から現在〜その1

 最近は暖かくなったと思ったら寒くなったりと、気温の変化が激しいので、体調管理にはお気をつけください。

僕は長野県出身ですが寒いのは本当に苦手なので、早く春になって欲しいです。

ですが犬にとっては寒い方が良いようで(うちの柴犬の場合)、先日も近所の公園でずっと走り回っておりました。僕もTシャツ一枚で負けじと走り回りました。

幕張は公園が多くて良いですね。しかも、大きな芝生広場がある公園が多いのがまたグッドです。

願わくば、近くにドッグランでもできてくれないだろうか・・・!




 話は変わって、僕の以前の勤務先で治療した患者さんから、とても素敵な贈り物が届きました。 お菓子と入浴剤、そして左のぬいぐるみ2つは犬用のおもちゃです! これにはテンションが上がってしまいました。今、僕の机の上にお菓子がズラリと並んでおります。入浴剤もその日のうちに使わせていただきました。すごい本格的な入浴剤で(入浴剤というか湯の花ですもんね)、自宅で温泉気分を味わうことができました。寒い日だったので、とても身体が温まって良い気持ちでした。

そしておもちゃもとても気に入ったご様子!噛みやすいところがたくさん付いているので、うちのたのすけ君もぶるんぶるん振り回しておりました。

まるで獲物を仕留めた様で、とっても素敵です!ぬいぐるみも、いい表情です!


と、このようにしばらくお会いしていない患者さんから贈り物が届き、治療の経過は大丈夫かしらと心配になりつつ、ほっこりさせていただきました。

そんな嬉しい出来事がありました。











 それでは本題に入らせていただきます。 先程お話した以前の勤務先、AQUA日本橋デンタルクリニックですが、毎月勉強会を開催しておりまして、そこでテーマに沿った論文抄読を行っております。 すでに僕は退職していますが、院長の綿引先生のご厚意により、毎月参加させていただいております。

今回は「歯肉退縮によって歯髄に影響を及ぼすことがあるのか」というテーマでした。 そこで学んだことを踏まえ、さらに調べてみます。

歯は、最表層のエナメル質という生体内で最も硬い組織に守られています。ですが、老化や歯周病、矯正治療や歯ぎしり(諸説あり)などで歯肉が下がってしまった際に、歯根が露出します。 ここはエナメル質ではなくセメント質という組織になりますが、露出したセメント質は経年的に毎日の歯磨きなどで磨耗、剥離し、象牙質という組織が出てきます。 ここが滲みます。 知覚過敏はほとんどがこの機序によって起こります。

象牙質がむき出しになる、という点では、虫歯を取った際や、被せ物のために歯の形を整える際にも象牙質はむき出しになりますよね。 そして、そこが滲みて痛い、痛みが強すぎて神経を取った、という方もよく耳にします。

なぜ痛くなるのかというと、象牙質には「象牙細管」という細い管が無数に通っており、表面に無数の穴が空いております。そこから神経の感覚を伝えているからなのです。 では、逆のことも考えられませんでしょうか。

つまり 「露出した象牙細管に細菌が侵入し、歯髄(神経)に感染ないしは炎症反応を引き起こさないのか」 ということです。

最近虫歯の治療をした歯や、何年も前に虫歯の治療をした歯、被せ物にした歯が急に痛み出して神経を取る羽目になった、という経験はございませんでしょうか?

前回のブログ記事でも登場しましたが、リクッチ先生(イタリアの歯内療法専門医)によると、虫歯が神経まで到達していない場合でも象牙細管に沿って細菌は侵入しており、その部分の歯髄は炎症を起こしている、と美しい組織像と共に解説しています。

さらにこのようにも言っています。



「臨床的に明らかに良好な修復治療のかなり後で、歯髄が壊死に至ることは珍しくない。これらの症例では、歯髄の壊死が細菌の残存や処置の過程、例えば不完全なう蝕の切削、外傷的切削、歯髄に対して有害な器具、修復マージンを通した細菌漏洩など、複数の要因によって生じたのではないかと考えられる。

(中略)

すべての回転切削器具(高速・低速ともに)について、冷却は満足いくレベルでなければならない。 さらに、スリーウェイシリンジの過剰使用による象牙質の乾燥も脅威とされるところである。 (中略)象牙質の乾燥は、最新の複合材料と接着システムを用いたウェットボンディングシステムによって効果的に防ぐことができる」 (リクッチのエンドドントロジー その時歯髄に何が起こっているのか? クインテッセンス出版)

つまり 削る時は優しく!(なるべく手用切削器具もしくは低速回転切削器具) しっかりと冷却すること! 削った後は接着システムを用いて象牙質を保護すること!

こういうことでしょう。 上の2つは昔から言われていた内容ですが、接着システムを用いるという考え方は割と最近になってよく聞くようになりました。 この3つを守ることで、歯髄の保存をできる可能性も拡がると思います。

ということで、過去の論文をみると、虫歯や被せ物処置の後に神経が痛み出すのは、感染も考えられるけれど、熱による刺激という方が多く報告されているようです。



 専門的な内容が増えてきますので、興味のある方だけ読んでください!

論文を紹介します。

1999年の論文で、先程も出てきました、象牙質接着システムについての報告になります。 これを行った際の歯髄の反応を、様々な材料を用いて検証しております。

要約

方法:46本の小臼歯の頬側表面に、クラスVの深い窩洞を形成。 10%リン酸処理と象牙質接着処理を行った「グループDA」 酸処理と接着処理の前に水酸化カルシウムセメントで保護した「グループCH」 半数は、歯垢で処理前に汚染させた「グループDAC」 プラーク(歯垢)を象牙質上に5分間置き、その後、窩洞を洗浄。 すべての歯は、光硬化型コンポジットレジンで修復された。それら歯牙は7、30、60日後に抜歯、組織学的検査を行った。連続切片を、H / E、Masson's trichrome、およびBrown & Brenn techniqueで染色した。

結果:病理組織学的評価により、グループDAおよびDACでは、炎症反応がグループCHよりも強く出ていることが示された。また、残存象牙質の厚さが減少するにつれて、歯髄反応が増加した。グループDAとDACの間で炎症反応に統計的な有意差は認められなかった。

結論:All Bond 2 接着システムは、深い窩洞の象牙質に適用した場合、生体適合性を示した。ただし、歯髄象牙質複合体の反応強度は、残存象牙質の厚さに依存する。

また、Introduction内にて

長年にわたり、歯科材料の化学作用が歯髄刺激の主な要因であると考えられていた。しかし、いくつかの研究では、充填材料下の窩洞に細菌の存在と歯髄の炎症との関連性が報告されている。これらの著者は、歯髄の反応は歯髄象牙質複合体に適用される材料の種類に依存するのではなく、細菌の微小漏れを防ぐ充填材料の能力に依存することを示唆している。

とあります。我々と同じように、切削時の熱に対してのみでなく、細菌の侵入があるのではないか、と考え研究を行った先生がいたようです。 最後に、discussionを要約して大事なところだけ箇条書きにしてまとめたいと思います。

・多くの研究者は、歯髄反応は細菌の存在によってのみ引き起こされると考えているが、いくつかの in vitro研究では、樹脂モノマーが象牙細管を介して細胞毒性を引き起こすことが示された。そのため生体適合性材料を用いて歯髄の保護を先にすべきである。

・Pashley は、露出した象牙質では、細管を通る外側への滲出液の流れが有害物質の内側への進行に対する防御であると報告した。象牙質には血漿タンパク質(アルブミンおよびグロブリン)も含まれているため、保護的な役割を果たす。

・窩洞の過度の加熱は、歯髄芽細胞の置換だけでなく、歯髄の炎症反応も引き起こす可能性がある。

・Stanley によれば、歯髄の炎症は象牙質に作用した酸性溶液によって起こる可能性がある。ほとんどの象牙質酸性コンディショナーは象牙質への適用によりスミア層が除去され、細管周囲象牙質が脱灰され、象牙細管の直径が増加する。これにより象牙質の透過性を劇的に増加させ、細胞置換を引き起こす。このようにして、酸性コンディショナーは防御反応に貢献できる。また、象牙質に塗布された接着性樹脂の親水性成分は、外側への組織液移動を促進する。

・細菌の存在と歯髄の炎症反応との強い関係が報告されているが、本研究ではそれを実証できなかった。→この報告についてもそのうち調べてみます。

という内容でした。


 理論的に納得することができる内容が多く含まれており、何より今回の研究に加えて、discussionにおいて、この時点までの様々な報告を知ることができました。 ただ、これは少し古い論文なので、現在はもう少しアップデートがされているかもしれません。その辺についても、今後調べてみようと思います。

ちなみに今回歯髄保護材料として使用されていたのは DENTSPLY SIRONA社のHydro Cという商品で、日本では販売されていないと思います。 おそらくDycalという商品が日本では類似品だと思います。

と、いうことで今回はこの辺で終わりにしたいと思います。 さらに気になる点が出てきてしまったので、続編は近いうちに公開したいと思います。 それではまたお会いしましょう!


平沼

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